2026/10/20 16:51
みなさま、「漆掻き」という言葉はご存知ですか?
漆を漆の木から採取する際に、専門の道具を使い漆を集めることを「漆掻き」と言います。
日本には漆掻きを専門とした「漆掻き職人」さんがおり、主要産地である岩手県二戸市浄法寺地域では、漆の全盛期の明治時代は6,000人ほど、現在は20人ほどの職人さんが活躍されています。
先日、日本で第2位の漆生産量を誇る、茨城県大子町にKOUSUIデザイナーが、人生初の漆掻き体験に行ってきました。
漆を搔ける時期は6月〜11月と決まっており、私たちが漆掻きに行った10月初旬は「末辺(すえへん)」と言って、漆の中では渇きが遅く、蒔絵や螺鈿などゆっくり作業を進めたい場合には最適な漆だそう。

最初にカマで漆の木の表面の凸凹をならしていきます。
続いて「カンナ」で樹皮に傷をつけ、そこからにじみ出てくる乳白色の樹液を採取します。
先のカーブしたヘラで、出てきた漆を一滴ずつ丁寧に掻き集めていきます。

ひとつの傷から一度に採れる漆は、わずか4滴ほどです。
普段、私たちが製品を通して目にしている漆。
その一滴一滴が、こうした地道な手仕事によって生み出されていることを、実際に体験することで改めて実感しました。

特に印象的だったのは、掻きたての漆の姿です。
普段見慣れている漆とは異なり、さらさらとした質感で、香りも驚くほど新鮮。
青々とした植物を思わせる、みずみずしい香りが広がります。
ところが、時間が経つにつれて色は少しずつ褐色へと変化し、粘り気も増していきます。

見慣れた漆の姿へと変わっていく、その短い時間の中での変化に、ただただ驚かされました。
採ったばかりの漆は「荒味漆(あらみうるし)」と言い、木のクズやゴミが入っているため、「吉野紙」という和紙でゴミをや木クズを濾して、「生漆(きうるし)」という精製された漆を作ります。
これが漆器や私たちの漆アクセサリーなど、様々な漆の工芸品の基本になる漆です。

今回の漆掻き体験を通して、何より心に残ったのは、私たちは木から貴重な樹液をいただき、それを素材としてものづくりをしているのだということです。
一滴の漆が採れるまでの時間と手間、そして自然の恵みを受け取ることのありがたさ。
そのすべてを、目で見て、手で触れ、肌で感じることができた貴重な体験でした。
漆に携わる者として、この景色に出会えたことを本当にうれしく思います。
今回の体験で感じたことを大切にしながら、これからも漆という素材の魅力を、KOUSUIのアクセサリーを通して皆さまにお届けしていきたいと思います。
